モーターショー(モビリティショー)やってて思うこと

JMS(ジャパンモビリティショー)2025が開催中ですね。
ウチはmayaとnukeでの実写からの車の差し替え(巻き替え)も得意としていますのでそのような案件がよく来るのですが、今年のZ-FLAGではいつもお取引させていただいている複数の会社様から数ヶ月前よりお話をいただき、結果4つのJMS案件が同時進行するという事態になっていました。
弊社の規模でこれはさすがに異常事態なので、2025年の9月10月はかねてより動いていたアニメ案件を一旦停止させていただいて対応しました。
今までの経験の中で、このような時によくある事や思う事を4選で挙げようと思います。

モーターショー(モビリティショー)やってて思うこと  その1
寸前までモデルが決まらない

これはずっと前からのあるあるですが、コンセプトカーは実際に売り出す車ではないのでデザインや細かい仕様が発表寸前まで決まらないことがほとんどです。
そして「いち早くデータが欲しい」というCG側からの要望に応えて、まず「最終版ではない」データがCG制作者に届きます。そして最終版は本当のギリギリまで引っ張られます。
またデータは製品仕様でないため、詳細まで作り込まれてない事が多いです。
たとえば外板の折り返しがない、複数のパーツが同時に存在していて、どれを使ってよいのかわからない、などなど。
それらを克服してレンダリング仕様のデータを作っても、ギリギリになって更新版が届く、といった塩梅です。
最近はBlenderでデータを貰うこともかなり増えてきました。
大手車メーカーのデザイン部でも、無料なので稟議を通さず手に入れられるBlenderは使い勝手が良いようです。

モーターショー(モビリティショー)やってて思うこと  その2
映像演出もモメモメ多発

それに従ってなのかはわかりませんが、特に最近は映像演出も二転三転する事が多いです。
愚痴になりますが某仕事では、全部で数カットの作業なのに「3カットがボツになりました、新たに1カット発生したのでお願いします」なんてことがありました。
記憶では納品1週間前くらいのタイミングです。
なぜ数カ月前から動いていた企画だろうに、こんな事になるのか、、、
オンライン編集中に、カットを増やしてくれという話も聞きました。
納品してオンライン編集後に、レイアウトを変えてくれという話も聞きました。
もはや怒りを通り越して笑いがこみ上げてきますが、ほとんどの場合そのまま明るくスルーして手を動かすしかないのです(すみません。私だって人間なので、そういう感情はあります)。

モーターショー(モビリティショー)やってて思うこと  その3
実際に手を動かす人(会社)に案件が集中する

それでいて、クオリティは求められるのがモーターショー仕事です。
それはそうです、車メーカーが威信かけてるんですから。
しかも求められる映像は映画をはるかに超える大解像度です。
なので安心できるCGプロダクションに案件が集中してやってきます。
映像制作会社の立場からすれば、普段からCMなどで同じような仕事に慣れている所でないと、安心して頼めない気持ちもわかります。
やはり経験のある所はやるべき事、気を付けなければいけない勘所が分かっているので、どんなにスピードが求められている状況でもしっかりした作業ができるのです。
またマッチムーブ作業も、実はすごく限られた一部の人が人気者になっていて、作業をしてたりします。
人気のあるところのマッチムーブデータは、やはり安定していてCGに差し替えやすい、良いデータです。

車のCG差し替え仕事では、実写とCGの「馴染み」という部分での高い実力が求められ、それは一種の「職人芸」の部分があります。
巻き替えはただCG車をnukeのmergeで上に乗せて合成するだけじゃありません。その後の修正が重要なのです。
「どうすればもっと馴染むか」「Mayaでのライティング作業に戻るべきか」「実際にこの世界にこの色の車があったら、どう見えるだろうか」
それらを徹底的に自問自答し、丁寧に何度も何度も追いこんでこそ、うまくいくのが合成作業です。
ヘタな所はそこが甘いです。
沢山のカット合成経験を積んだ人間、もしくはその眼をもった人のディレクション、そしてある程度の時間がないとできない事なのです。

弊社もいくつか案件をいただけたのは、同じような需要が集中した時期だったのはもちろんですが、
今までの我々の実績が安心となっている証拠なのかもしれません。本当にありがとうございます。
ぜひまたよろしくお願いいたします(宣伝)

モーターショー(モビリティショー)やってて思うこと  その4
いよいよAIの時代がやってきた

そんな職人芸の仕事を脅かす存在が、生成AIでしょう。
事実、CM仕事の仮編集Vコンなどでは異様に綺麗なAIムービーが使われる事が増えてきました。
今回2025年のJMSでもVコンに生成AIの動画が使われ、「もうこれでイイんじゃないの?」と思うような映像が出てきています。
まだ動画の安定性や著作権など、課題はあると思いますが2年後のJMSでは一体どういうことになるのでしょうか。
少なくとも今回とは大きく違った映像の作り方になっていることでしょう。

私は「3丁目の夕日」に登場する、ピエール瀧扮する氷屋さんを思い出してしまいます。
触っていればチヤホヤされていた(?)3DCGは、当たり前になり、職人技がないと食べられなくなり、そしていつの間にか新しい手法に脅かされる存在となりました。
電気冷蔵庫に変わっていく世の中で、氷屋はどう時代の変化について行くのか。
CG屋も氷屋からアイスキャンデー屋、コカコーラの自販機屋へのシフトチェンジが必要なのかもしれません。

2年後のJMS2027はどうなっているのでしょうね、、、?

Z-FLAG

東京の神保町のCGプロダクションです。日本一を目指して活動中

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