CG屋のWebやデモリールの発表や許諾についての私の見解

CG屋さんの葛藤

CG屋さんが生きていく上で、関わった仕事の映像を人に見せなければならない状況は必ず発生します。また他人に「これを作ったぞ」と誰かに伝えたい、という思いは、CG屋というよりも作り手、人間にとっての根源的な欲求でもあります。

しかし実制作において、CG屋はあくまでプロとしてCG制作をクライアントから請け負っただけというパターンがほとんどであり、デザインや映像そのもの、また使用したCGモデル等についての発表の権利までは認められていないのが実情です。

ここでCG制作者としての葛藤が起こります。やった仕事を人に言いたくてたまらないのに、許されていないのです。

影響力は、昔とは大違い

昔はCGプロダクションのデモリールはよほど大手の物が放送に使われるくらいで、クライアント候補者や検討者向け、企業紹介用としてだけの、ごく狭い範囲で使われていました。

また版権に対する世間の眼も、今よりおおらかだったと感じます。

昔、アメリカの大手CGプロダクションが他プロダクションを買収しまくったときのデモリールは、他社のデモリールをさらに寄せ集めた節操のないものになっていました。

私はそれにならって、Z-FLAGが単なるフリーランスの集まりだった時代、みんなの過去関わった作品をまとめてデモリールとして人に見せていた時代もありました。それが一番実力を示せたからです。

しかしこれが今の時代、そしてWebとなると、状況はまったく違います。今は誰もがデモを広く世界中に発信できる反面、ある意味TV放送よりも影響力があり、またその事実を簡単にクライアントがチェックできてしまう状況になったのです。

通常、CG屋がCGを仕事として請けた場合、NDAと言われるものを取り交わします。そこには必ず「機密保持」の条項があります。そこでは大抵、知りえた情報や成果物を第三者に開示することは許されず、開示する場合は権利を侵害しないこと、必ず誠意をもって報告することなどが明記されます。

CG業界の通例として、とくに何も取り決めが無かった場合でも、CG屋さんが自社や個人のWebやSNSに、その仕事または「関わった」という情報すらも、載せる事は許されないと考えるのが常識です。NDAがなかったとしても載せたい場合は許諾を得るのが、まともな常識ある大人のやることでしょう。

 

許諾を得る際の大原則

許諾はどう得るのでしょうか。ここでひとつ大きな原則があると思います。「直上のクライアントにかけあって許諾を得る」です。直上とはお金の流れでの直上。自分が請求書を出す相手の事です。

CGの仕事は大元のクライアントから、代理店→制作会社→CGプロダクションというような流れを追って降りてきます。それぞれが責任を持って仕事をしており、世の中に流したくない事情やタイミングがあるかも知れません。まあ実際のところ、仕事の流れのツリー構造の下の方に行けば行くほど、その担当者は「この仕事はウチがやった」と言いたくなるものです。

だから許諾の話はたいていクライアントはしたがらないし、面倒でしかないので断られたり、無視される事も多いのです。

しかしだからと言って、許諾の為にツリーを1つ飛ばしたり、その声すら掛けないのは常識に欠け、なにより失礼です。そして信用を失うでしょう。私はZ-FLAGの社長としてそんな事はできません。

もしあなたが仕事の流れ上、最下位のフリーランスだったとしても同様です。直上の責任者にお伺いを立て、その上さらにその上、、最後は大元のクライアントに許諾をもらえるように掛け合うのが、あるべき姿だと思います。

したがって当然ながら、プロダクションで働いていたスタッフ(社員でもフリーでも)がそこを辞めて独立した、という場合でも、その元スタッフはプロダクションに対して新たに許諾を得ない限り所属時の仕事を勝手に公表すべきではない、というのが私の見解です。

もしその参加しただけのスタッフが順序を無視し、まるで自分がその仕事をすべて請け負ったかのように勝手に自社WebやSNSで発表しているのであれば、それは大きな間違いであり、常識にも礼にも欠ける行為だと考えます。そんな話をよく聞きます。世の中、そんな問題が多すぎるのです。

もちろん、このサイトのWORKSには直上クライアントより許可を得たものを上げています。許諾をくださったクライアントの皆様、本当にありがとうございます。

 

関わった仕事をどう見せるべきなのか

Webの話ばかり書いてきましたが、デモリールは本来「その人がどんな仕事をしてきたか」ということを他人に説明するために使われます。映像屋である我々にとって、そこにやってきた仕事を載せられるかどうかは死活問題になりえます。

しかし上記のようにたいていのNDAではその行為すらも明確に禁止されています。でも何か見せるものを持って行かない限りは話すら聞いてもらえない、という厳しい状況になります。

その辺は業界の中で今どうなっているかというと、Webのように世の中に大々的に宣伝しない限りは、「会ったときに人に見せる」くらいのことは黙認されている(ただし自己責任)というのが、いまの実情というところだと思います。

また発表の仕方として「CGプロダクション年鑑」や他のプロダクションがwebでやるようにポスターの画像を掲げて「この映画に参加しました」だけでは、まるでその映画の全てをやったかのようになってしまいます。そうなってしまう理由もよく分かるのですが。何よりも見た人に「どこがどれだけ参加したのか」が伝わりにくい。

なので、私は関わった映像を紹介するとき「どこを担当したか」という事を、できるだけ明確に誠意を持って嘘をつかずに説明します。それが嘘のない自分達の実力を見せるという事であり、私共を発注候補として検討してくださっているお客様への礼儀だと思うからです。

「デモリールを送ってくれ」というお客様は多くいらっしゃいますが、ただ送るだけでは真の誠意あるプレゼンになりません。本当はお会いしてお話させていただくのが一番良いのです。今までほとんどZ-FLAG Webに仕事を載せてこなかったのもそんな理由からです。このWebに仕事を載せるにあたっても、私はクライアントの意向でない限りは、できるだけの解説を加えています。

「見せたいのに見せられない」私は長年3DCGを作ってきて、その思いを痛いほどわかっています。
当然ここまで書いたからにはこの法則は「Z-FLAGが頼むフリーランスさんや会社さん」にも当てはまると言うべきでしょう。私は要望があった場合には協力してくれたCG屋さんが胸を張って自分の仕事を世の中に発表できるよう、断固努力します。

私はお客様や外注さんとはそういう関係でありたいし、そういう姿勢が広まる事がこの業界を良くさせると信じたいです。

しかし、やっぱりそれでも許諾がNGなときもあるでしょう。
その時は申し訳ありませんがどうか、笑って許してください。

私もそうしてきました!

Z-FLAG

東京の神保町のCGプロダクションです。日本一を目指して活動中

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